DXを推進すれば経理の業務も効率化できるの?
経理のDX推進って具体的に何をするの?
本記事では、経理部門のDX推進における成功事例を5つ具体的に紹介します。
DX化の進め方やメリット、経理の課題と解決策、成功のポイントを詳しく解説します。
できそうでまだ取り組めていなかった経理業務の効率化について、解決の糸口が見つかるでしょう。
本記事で紹介する内容をご参考に、業務を効率化し働きやすい環境に変えていきましょう。
経理におけるDXとは
経理の業務にもDXは関係あるの?とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ルーティンワークが多い経理こそ、データ化やデジタル化に適している業務と言えます。
ここからは、経理部門でDXを推進する上で確認しておきたい基礎知識を確認しましょう。
- 経理業務の多くはルーティンワーク
- 経理のDX推進に取り組む必要性
- DXの3段階
経理業務の多くはルーティンワーク
一般的な経理業務には、次のようなものがあります。

ルーティンワークは、デジタル技術の導入による効率化・自動化が図りやすいといえます。
経理のDX推進に取り組む必要性
政府もDX推進を推奨しており、大手企業を中心にDX推進により成果を獲得している企業が増え始めました。

多くの企業がDXを推進すれば、経理業務にも必ず影響が及びます。
現状DX推進に取り組んでいる企業が進んでいるという印象ですが、今後はDX推進に取り組んでいない企業はネガティブなイメージになることが予想されます。
DXの推進は、大手企業だけでなく中小企業にとっても取り組むべき課題です。
DXの3段階
DX推進するには3段階のプロセスがあります。

顧客データに基づいてパーソナライズされた商品を提供する
1ヵ月かかっていた納期→デジタル技術を駆使し2週間に短縮する
いきなりDXまで進められません。
紙の資料などをデータ化するところからはじめましょう。
経理のDXを推進するメリット
DXに取り組む企業は増加傾向にあり、取り組んだ企業のほとんどは何かしらの成果が出ていると言われます。
業務効率化だけにとどまらない、下記のメリットについて確認していきましょう。
コスト削減につながる
経理部門のDX推進は、コスト削減や生産性の向上につながります。
時間がかかる毎月の締め業務などに、デジタル技術を活用すれば大幅に時間を短縮できます。
中には、経理にかかるルーティンワークを50%削減できた事例もありました。
データをデジタル化すれば、ペーパーレスを促進でき資源削減にもつながるでしょう。
柔軟な働き方に対応できる
経理のDX推進により、従業員の柔軟な働き方に対応できます。
DX推進に取り組めば、さまざまな事情により「出社はできないが家で仕事はできる」従業員にもリモートワークで業務に当たってもらえるでしょう。
ハンコを不要にする、データを一元管理するなどの施策で、一定の業務は出社しなくても対応できます。
労働人口が減っていく中で、優秀な人材の確保は重要課題です。
柔軟な働き方への対応により、従業員は家庭と仕事の両立がかない、離職率が低下し、将来的に人材の採用コストや教育コスト削減も達成できるでしょう。
経理担当者は高いレベルの業務に時間をあてられる
社会全体でDX化が進むと、経理担当者にも人間にしかできない業務を求められるでしょう。
たとえばルーティンワークは自動化し、経理担当者はそのチェックなど「人にしかできない業務」を行います。
また会社の課題解決の糸口や、経営方針を決める材料をデータから見つけるといった、高度な業務が求められます。
経理の業務には、最新の法改正への対応など常に新しい知識の習得も必要です。
経理業務のDX推進で、従業員はより高度な業務に対応できるようになることが求められるでしょう。
経理がかかえる課題とDXによる解決策
経理が抱えるよくある課題は次のとおりです。
- 特定の人しかできない業務がある
- 入力ミスや計算間違いなどのミス
- 紙での管理による効率の悪さ
- 法改正への対応
- 業務量の増加
- 経営層への情報提供の遅れ
- リモートワークへの対応
ここからは、これらの課題についてDX推進でできる解決策を紹介します。
特定の人しかできない業務がある
企業独自のルールがある、専門性が高いといった理由で、経理の業務は属人性が高くなる傾向があります。
業務が属人化するデメリットは以下のとおりです。
- 担当者の不在により業務が滞る
- ノウハウが共有されない
- マニュアル化するのが難しい
DXを推進することで、情報がデータとして蓄積されるため、特定の担当者以外でも過去のデータを参考に対応できるようになります。
またDX化を進める中で、ブラックボックス化していた業務内容が明確になると、作業の見直し・共有ができ、属人化を解消出来るでしょう。
入力ミスや計算間違いなどのミス
ミスしないのが当たり前と思われる経理でも、手作業によるデータ入力や計算により次のような人的ミスが起こることがあります。
- 転記ミス
- 計算間違い
- 入力ミス
このようなミスをDX推進で低減できます。
ミスを防ぐには集中できる環境を整え、ダブルチェックがかかせません。
データ化により、ルーティンワークを自動化すれば、担当者はそのチェックに時間を割けるでしょう。
紙での管理による効率の悪さ
ペーパーレスが推奨される中、まだまだ紙が無くならないという企業も多いのではないでしょうか?
紙で書類などを管理する場合、次のようなデメリットがあります。
- 保管に場所をとってしまう
- 管理に手間がかかる
- データとして検索や共有するのが難しい
紙の書類をデータ化すれば、管理の手間が省け、データ分析などに活用できるでしょう。
法改正への対応
経理の業務に大きく影響するのが法改正です。
税制や会計基準が頻繁に改正され、都度新たな知識を習得し、体制を整えなければいけません。
法改正に対応しなければ、企業のコンプライアンス違反につながるリスクがあります。
経理業務に最適なデジタル技術を導入しておくと、法改正にも対応可能です。
即時に対応可能、体制整備にかかる労力が削減されるため余裕を持って対応できるでしょう。
業務量の増加
企業が成長すれば、その分経理業務の量も増加します。
また経理にかかる規制が複雑になっていることも、業務量が増える原因です。
人手不足の場合、担当者の負担が大きくなってしまい、作業効率が下がる恐れがあります。
DX推進で経理のさまざまな業務を自動化できます。
また業務の標準化により、作業時間を大幅に減らすことも可能です。
優秀な人材の確保が難しい中、可能な限り自動化・デジタル化し、従業員は人にしかできない業務だけ対応していくことが重要です。
経営層への情報提供の遅れ
日々の業務だけに追われていると、経営層が経営判断に必要な情報を迅速に提供できない可能性があります。
経営判断に必要な情報をリアルタイムで提供できない理由には次のようなものがあります。
- データのアナログ管理
- データが分散している
- 情報共有ができていない
情報提供の遅れにより、ビジネスチャンスを逃したり、経営戦略に悪影響を及ぼしたりするかもしれません。
DX化によりデジタル技術を活用して、経理担当者はデータから読み解ける企業の課題解決を考案していきましょう。
リモートワークへの対応
経理業務にも、リモートワークへの対応が求められています。
経理部門では請求書など紙を使ってやりとりすることも多く、リモートワークへのハードルが高いという問題があります。
- クラウド化
- デジタル化
- ハンコ不要 など
これらの基盤となる業務をデジタル化などで整えておくと、リモートワーク実施に困りません。
リモートワークの普及が進めば、多くの従業員にとって働きやすい環境整備につながるでしょう。
DX推進で経理業務効率化に成功した事例
ここからは、DX推進で経理業務の効率化に成功した事例を5つ紹介します。
どのような戦略を取っているかも解説するため、チェックしておきましょう。
【その他製品業】株式会社アシックス
株式会社アシックスは、DX推進により部署の垣根を越える統合的な改革を行っています。
経理・財務部門を引き入れ、データに基づいたサプライチェーンマネジメントの強化をすすめています。
データの活用で、在庫管理や需要に合わせた生産が可能です。
また従業員に対する教育の一環として、財務や経理の知識を習得できる仕組みを作っている点も特徴です。
経理だけにとどまらず、サプライチェーンの管理・連携を絡める取り組みは大きな改革と言えるでしょう。
出典:「ASICS統合報告書2023」
【陸運(貨物)業】SGホールディングス株式会社
SGホールディングス株式会社は、自社開発のAI-OCRやRPAを活用し、 オフィス業務の効率化を図っています。
配送伝票の読み取り作業を効率化するために、開発されたのがAI-OCRです。
従来のOCRにAIの機能をもたせ、手書き文字やさまざまなフォントの文字でも正確に読み取れるようにしました。
AI-OCRの活用と、手順が決まった業務はRPAを導入することで、経理業務の効率化も図っています。
また社内の業務効率化を目的に開発したAI-OCRは、現在さまざまな企業の業務効率化を解決するサービスとして展開されておりDXの典型といえるでしょう。
出典:SGホールディングスグループDX戦略/総務省「分析に欠かせないデータ化支援ソリューション」
【土木工事業】株式会社池田組
土木工事業を展開する株式会社池田組では、2023年にDX推進をスタートし着実にDX化が進んでいます。
アナログデータはすべてデジタル化し、バックオフィス業務の効率化を図りました。
成功のポイントは、教育プログラムや「社内DX認定制度」を設け、従業員がデジタル技術に関する知識を習得できる環境を整えている点です。
これにより、社員一人一人がDX推進を自分事として捉え、業務の変革に取り組めています。
またDX推進チームについて、社長が直轄し部署ごとに担当者を設置しているのも重要なポイントです。
社長自らDX推進の舵を取ることで、迷ったときにも方向性を即座に決められます。
さらにDX推進チームの担当者は、自身の部署内でDX推進の目的や方向性を理解してもらえるよう情報共有することで、従業員全員が当事者意識を持って取り組めるでしょう。
出典:DXへの取り組み
【情報サービス業】福島コンピューターシステム株式会社
福島コンピューターシステム株式会社は、経理社員のテレワークを実現しています。
紙の請求書は廃止し、クラウド型の請求書受領管理ツールを導入しました。
- 請求書管理
- ファックス
- 入金
上記業務のデジタル化、脱ハンコなどの取り組みで経理業務も在宅で対応可能になり、ペーパーレスの促進にもつながっています。
DX化を進める中で、経営層や管理職・プロジェクトリーダーがDXリテラシー講座を受講し、DXの必要性を理解したことでDXの導入がすすみました。
出典:DXへの取り組み
【陸運業】東栄運輸株式会社
経理業務の自動化を進め、社内変革につなげている事例を紹介します。
東栄運輸株式会社は、伝票作成や会計ソフトにおける決まった箇所の入力を自動化し、事務作業にかかる時間を10%削減しました。
サーバーのクラウド化やチャットツールの導入により、社内全体でデジタル化へ取り組むよう参加意識を高めています。
今後は経理業務などの事務作業を自動化し捻出したリソースで、他部門のアシストや従業員のレベルアップにつなげていく見通しです。
出典: 埼玉県DX推進支援ネットワーク「東栄運輸株式会社の取組事例」
経理DX推進のステップ
DXは会社全体で抜本的な変革を行うことを指すため、経理だけでなく社内全体でDXを推進することが重要です。
- 社内全体でのDXで達成したい目標を決める
- DX推進チームを発足する
- 業務を棚卸しし課題を洗い出す
- 優先順位を決めロードマップを作成する
- 課題解決に最適なツールやサービスを導入する
- ITに強い人材を育成する
- 目標達成に向けPDCAサイクルを回す
大きく会社が変わるため、会社全体で同じ方向を向いて取り組む必要があります。
そのため目標設定は重要で、経営目標と絡め詳細に決めるとDX推進で生じる問題にも迷わず取り組めるでしょう。
従業員個々の取り組みとしては業務内容の可視化を行い、無駄な作業や効率化できそうな作業を洗い出します。
小さな目標からでもいいので、ひとつずつ達成していけば、従業員それぞれがDX推進の必要性を感じ、積極的に取り組めるようになるでしょう。
経理のDX推進で活用できるツール・システム
経理のDX推進に活用できるツールやシステムは多岐にわたります。
種類 | 内容 |
---|---|
クラウド型会計ソフト | 伝票入力・仕訳・帳票の作成など多岐にわたる会計業務をクラウド上に保管できる |
AI-OCR | 請求書など紙に記載・印字されている文字を読み取りテキストデータに変換 |
RPA | PC上のルーティンワークをロボットに覚えさせ自動化 |
ワークフローシステム | 申請・承認の業務をデジタル化 |
ERP | 生産・物流・販売・会計などの基幹業務を統合的に管理できる |
AI文書作成システム | 決算短信・開示文書などを作成・保管できる |
課題をまとめて解決できるツールと、特定の業務に特化したツールなどさまざまです。
自社全体でかかえる課題を統括して、解決に最適なツールやサービスを選びましょう。
DX推進の失敗事例から学ぶ成功のポイント
DX推進での失敗事例を参考に、注意する点や成功のポイントを確認しておきましょう。
目的やゴール設定があいまいで進まない
いざDX推進に取り組むものの、何から手をつければいいかわからない、方向性がわからないといった理由で、ストップしてしまう事例が多々あります。
DX化を推し進めるために、経営層を中心にDXの進め方、目標・目的を明確にすることが重要です。
またDX推進チームを発足し、各部署1人以上は参加します。
DXは従業員一人一人の理解と積極的な協力が不可欠です。
DX推進チームのメンバーは、DX推進の目標・目的、現在の方向性を自分の部署で逐一共有しましょう。
導入したシステムが既存のものと変化がない
現場の意見を取り入れた結果、新しいツールやシステムを導入しても既存のものとほとんど変わらないものになってしまった事例です。
現場の意見を取り入れることも重要ですが、会社を大きく変革し成長させるためには、意見を取捨選択する必要があります。
企業として、目標・ゴール達成のために最適な方法を選ぶことが重要です。
業務にツールやシステムを合わせるのではなく、ツールやシステムに業務を合わせていくと良いでしょう。
デジタル人材の育成
DX推進を成功させるためには、社内でのデジタル人材を育成することがポイントです。
ツールやシステム、外部のサービスに頼りきりで、社内でデジタルに関する知識を持つ人材がおらず運用に困ってしまう事例があります。
社内業務をデータ化、デジタル化するだけでなく、それらのツールやシステムを使いこなし、新たなビジネスチャンスを生み出すことが重要です。
そのためには社内の教育制度を整備する、資格取得費用を補助するなどして、デジタル・ITに強い人材を育成する必要があります。
成果につながるまで時間がかかる
数値化できる成果達成には、少なくとも1~2年はかかっているケースがほとんどです。
最初に取り組むべきデータ化の作業は時間がかかります。
従業員が息切れしないよう、DX推進チームでフォローしながら取り組みましょう。
時間がかかることを想定し、コスト管理を徹底する、優先順位をつけて取り組むのがおすすめです。
まとめ
本記事では、経理部門のDX化事例を紹介しました。
業界や会社の規模に関係なく、目標が明確で、従業員が積極的な企業ほどうまくいっています。
本記事を参考に経理業務の効率化に役立てて下さい。